誰のための福祉か―走りながら考えた

誰のための福祉か―走りながら考えた

誰のための福祉か―走りながら考えた
誰のための福祉か―走りながら考えた
岩波書店
price : ¥1,050
release : 1996/05

行政の立場からの福祉論、専門的ではないかも知れないが好著

アサノ宮城県知事時代の連載エッセイ集、軽妙で読ませる文章です。人の六倍しゃべるとの自己紹介ですが、文章もなかなかで文筆家としても上質の部に属すると思います。シャレっ気たっぷりでおやじギャグも飛び交いますが、読み手へのサービス精神がそもそものところにあり、それが形を成している印象。
第一部は雑記なので確かに書名とミスマッチですが、第二部が福祉論。曰く、
「どんな重い障害を持っている人も、地域の中であたりまえの生活を送ることができるようにする」、
(デンマークの障害者のグループホームで)「一人ひとりに意思確認がされている。動けない、意思伝達も困難なこの人たちに、そのことが尋ねられている」、
「知的障害者を施設から社会に出すなんて荒れている海に泳げない人を投げ出すようなもんだとS氏は言う。どうしてその海を泳ぎが得意でない人でも海水浴を楽しめるようにしようとしないのかと私は応じたかった。海に小舟を浮かべたらいい、監視員を多く配置したらいい、浮き袋を用意したらいい」、
云々。「つらいだけなら続かない。使命感とか高い目標のためにとかでは疲れてしまう。それ自体楽しいから、気持ちがいいから続くのだ」とも。
第三部佐高さんとの対談では、私の限られた経験では、と注釈しながら官僚にもいろいろいてステレオタイプばかりではない、というようなことをきっぱり言うので、人当たりが柔らかいけれどもここ一番で相手に迎合しない、経験に裏打ちされ確信できることだけ断言する誠実さ、といった性格が伺えます。当意即妙の言葉選びなどもニヤリとさせます。
posted by 仙台なび at 11:36 | 仙台さまざま情報